会社・店舗への名誉毀損と営業妨害|法人ができる削除・開示・賠償
この記事の結論
- 会社やお店も、ネットの書き込みで社会的な評価を下げられたときは、削除の依頼・投稿者の特定(発信者情報開示)・損害賠償の請求ができます。法律の言葉は「自己の権利を侵害されたとする者」「他人」で、個人に限っていません。
- 「売上が落ちた」「客が来なくなった」という被害は、名誉毀損だけでなく、うその情報で信用を傷つける信用毀損罪や、業務妨害罪(刑法233条・234条)の問題にもなり得ます。
- 名誉毀損罪と侮辱罪は告訴が無いと起訴されない罪(親告罪)で、告訴は犯人を知った日から6か月以内です。信用毀損罪・業務妨害罪は親告罪ではありません。
最終更新日: 2026-10-24
口コミサイト、SNS、掲示板に「この会社は詐欺をしている」「あの店は不衛生で食中毒を出した」といった書き込みをされ、問い合わせや予約が減った、という相談があります。ここでは、会社やお店(法人・個人事業主)の立場で何を求められるかを、刑法・民法・情報流通プラットフォーム対処法の条文から整理しました(2026年10月24日にe-Gov法令検索で確認)。
書き込みの内容で変わる罪の名前
| 罪 | どんな行為か | 法定刑 | 告訴 |
|---|---|---|---|
| 名誉毀損罪(刑法230条) | 公然と事実を示して、社会的な評価を下げる | 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 | 必要(親告罪) |
| 侮辱罪(刑法231条) | 事実を示さずに、公然と侮辱する | 1年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金、または拘留・科料 | 必要(親告罪) |
| 信用毀損罪(刑法233条前段) | うその情報を広めるなどして、支払能力や商品の品質についての信用を傷つける | 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 | 不要 |
| 業務妨害罪(刑法233条後段・234条) | うその情報や偽計、威力で業務を妨げる | 同上 | 不要 |
名誉毀損罪と侮辱罪は「この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない」(刑法232条)とされ、告訴は犯人を知った日から6か月を過ぎるとできません(刑事訴訟法235条)。信用毀損罪・業務妨害罪は別の章にあり、この制限はかかりません(e-Gov法令検索「刑法」、「刑事訴訟法」)。
どの罪にあたるかは、書き込みの具体的な内容と、それが事実かどうかで変わります。「対応が遅い」「高い」のような感想や評価は、どの罪にもあたらないことが多いです。考え方は名誉毀損とは|成立要件と侮辱罪との違いにまとめています。
法人として求められる3つのこと
| 求めること | 相手 | 根拠 |
|---|---|---|
| 投稿の削除 | サイトやSNSの運営者 | 各サービスの規約による報告、または権利侵害を理由とする削除の申出 |
| 投稿者の特定 | 運営者・通信事業者(プロバイダ) | 情報流通プラットフォーム対処法5条の発信者情報の開示請求、または裁判所の開示命令 |
| 損害賠償・名誉回復 | 投稿者 | 民法709条・710条(損害賠償)、723条(名誉を回復する処分、謝罪広告など) |
開示請求の条文は「特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者」が請求できる、と定めています(e-Gov法令検索「情報流通プラットフォーム対処法」)。民法709条も「他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者」に賠償の責任を負わせていて、どちらも個人に限っていません(「民法」)。
法人の場合、損害として説明しやすいのは、書き込みの後に減った予約・問い合わせ・売上や、対応に使った費用です。書き込みとの因果関係を示す必要があるので、時期ごとの数字を残してください。手続きの順番は削除請求と発信者情報開示の違い、Googleマップの口コミの場合はGoogle口コミの名誉毀損にあります。
社長や従業員個人が書かれた場合
「社長は前科がある」「店長がセクハラをしている」のように、会社の中の特定の人について書かれた場合は、その人自身も被害者として削除・開示・賠償を求められます。会社と個人のどちらの評価が下げられたのかで、請求する人が変わるため、書き込みごとに「誰について何が書かれたか」を分けて整理してください。従業員が名指しされている場合は、その人の意向を確かめてから進めます。
最初に残す記録
- 書き込みのURL、投稿日時、投稿者の表示名が分かる画面(誹謗中傷の投稿を見つけた時に保存する証拠)。
- 書き込みが事実と違うことを示す資料(保健所の検査結果、取引の記録、社内の調査結果など)。
- 書き込みの前後の予約数・問い合わせ数・売上の推移と、「書き込みを見た」という問い合わせの記録。
- 運営者へ報告した日時と、その返事。
投稿者を特定するための通信記録(ログ)は保存期間が限られます。期限の考え方は発信者情報開示の期限を見てください。
よくある質問
会社でも名誉毀損で慰謝料を請求できますか?
民法の名誉毀損の規定は「他人の名誉」を守るもので、個人に限っていません。法人の場合は精神的な苦痛ではなく、信用や評価が下がったことによる損害として説明することになります。金額は書き込みの内容や広まり方で変わります。
うその口コミで売上が落ちた場合は何罪ですか?
うその情報で商品やサービスの信用を傷つけたなら信用毀損罪、業務を妨げたなら業務妨害罪(刑法233条)が問題になり得ます。どちらも告訴が無くても起訴できる罪です。
名誉毀損で告訴できる期限はありますか?
名誉毀損罪と侮辱罪は親告罪で、告訴は犯人を知った日から6か月以内にする必要があります(刑事訴訟法235条)。投稿者が分からないうちは期間が進まないため、特定できた時点で早めに相談してください。
本記事は一般的な情報提供で、個別の書き込みが名誉毀損や業務妨害にあたるか、賠償が認められるかを判断するものではありません。