ネットの削除代行業者に頼む前に|弁護士法72条と確認すること
この記事の結論
- 弁護士でない人や会社が、報酬を得る目的で他人の法律事件について代理や交渉などの法律事務を仕事として行うことは、弁護士法72条で禁じられています。違反には2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金があります(77条)。
- 書き込みの削除を相手のサイトに「代わりに請求する」「交渉する」サービスは、この規定に触れるおそれがあります。頼む前に、誰が名義人として削除を求めるのかを確かめてください。
- 通報フォームからの削除依頼や送信防止措置の申出は、本人が自分で出せます。自分で難しい場合の依頼先は弁護士です。
最終更新日: 2026-10-24
検索すると「削除代行」「誹謗中傷対策」「風評被害対策」をうたうサービスがたくさん出てきます。急いで消したい気持ちから申し込む前に、法律で誰がどこまでできるのかを知っておくと、お金を払ったのに削除されない、後で問題になる、という事態を避けられます。ここでは弁護士法の条文をもとに整理しました(2026年10月24日確認)。
弁護士法72条が禁じていること
72条は、弁護士または弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で、訴訟事件などや「その他一般の法律事件」に関して、鑑定・代理・仲裁・和解などの法律事務を扱うこと、またはその周旋(あっせん)をすることを業とすることを禁じています。他の法律に別の定めがある場合は除かれます。73条は、他人の権利を譲り受けて、その権利を訴訟などで実行することを業とすることも禁じています。
| 条文 | 中身 | 罰則(77条) |
|---|---|---|
| 72条 | 弁護士でない者が、報酬目的で法律事件の代理・交渉などの法律事務を扱うことや、その周旋を業とすること | 2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金 |
| 73条 | 他人の権利を譲り受けて、訴訟などでその権利の実行を業とすること | 同上 |
削除のサービスで気をつける場面
書き込みが名誉毀損やプライバシーの侵害にあたるとしてサイト運営者に削除を求めることは、権利侵害を理由とする請求です。次のような説明を受けたら、そのサービスが誰の名前で何をするのかを確かめてください。
- 「当社があなたの代わりにサイト運営者へ削除を請求します」「運営者と交渉します」
- 「投稿者を特定して損害賠償を取ります」「示談をまとめます」
- 「提携している弁護士を紹介します。紹介料はいただきます」(紹介を業として報酬を得ることも周旋にあたるおそれがあります)
一方で、書き込みを見つけて記録する監視の作業や、本人が自分で申出をするための書き方の一般的な説明は、事件の代理とは性質が違います。境目はサービスの中身で変わるため、契約書と申込画面で「誰が名義人になるか」「法律事務は誰が行うか」を見てください。
本人が自分でできること
| 方法 | 内容 | 詳しい手順 |
|---|---|---|
| プラットフォームへの通報・削除依頼 | 各サービスのフォームから、規約違反や権利侵害を申し出る | 投稿の削除請求の流れ |
| 送信防止措置の申出 | 情報流通プラットフォーム対処法にもとづき、権利を侵害されたとする本人が削除を求める | 送信防止措置の依頼・内容証明とは |
| 無料の相談 | 総務省の委託を受けた違法・有害情報相談センターが、削除の進め方や投稿者の特定について助言している | 誹謗中傷の相談窓口一覧 |
違法・有害情報相談センターは、大規模なプラットフォーム事業者が情報流通プラットフォーム対処法の義務を果たしていない(削除の申出に返事がないなど)場合の報告も受け付けています(e-Gov法令検索「情報流通プラットフォーム対処法」)。
依頼するなら確かめること
- 相手が弁護士か弁護士法人か。弁護士なら所属する弁護士会と登録番号を聞けば、弁護士会で確認できます。
- 費用の内訳(着手金・成功報酬)と、削除されなかった場合の扱い。費用の目安はネット削除依頼の値段・削除請求の費用と期間と誹謗中傷の弁護士費用にあります。
- 「必ず消せる」「今日中に消える」と言い切っていないか。削除するかどうかを決めるのはサイト運営者や裁判所です。
すでに業者に頼んでしまったとき
契約書・申込画面・振込の記録・業者とのやり取りを残してください。説明と違う内容だった、解約したいという場合は、消費者ホットライン(188)で消費生活センターに相談できます。投稿そのものの対応は、あらためて自分で申し出るか弁護士に相談します。
よくある質問
削除代行業者に頼んだ自分も罰せられますか?
弁護士法77条で罰則の対象になるのは、72条や73条に違反して業として法律事務を扱った側です。依頼した人が同じ罰則を受けるとは定められていません。ただ、業者の対応が後で問題になると、削除の手続きをやり直す必要が出ることがあります。
削除の申出は本当に自分でもできますか?
できます。各サービスの通報フォームや、送信防止措置の申出は、権利を侵害されたと考える本人が出すことを前提にした手続きです。書き方に迷うときは違法・有害情報相談センターに相談できます。
弁護士に頼むと、必ず削除されますか?
必ずではありません。削除するかどうかはサイト運営者の判断や裁判所の決定によります。弁護士に頼むと、任意の削除請求で応じない場合に仮処分などの裁判手続きまで進められます。
本記事は一般的な情報提供で、個別のサービスや業者が違法かどうかを判断するものではありません。